日本財団 図書館


しかしながら、こうした人口の集中は都市の過密化や地価の高騰、狭い住居、長い通勤時間などをもたらし、昭和50年代以降の、経済成長の停滞と共に都市住民の地方回帰を一層促すようにもなった(図表2-10東京への定住志向)。
昭和61年4月、国際協調のための経済構造調整研究会は我が国の経済の方向を示した報告書を出した。いわゆる「前川リポート」である。報告書はこの中で、国民が真に豊かさを実感しえない理由を3点に要約している。第1は高い地価、第2は物価の高値安定、第3は長時間労働である。リポートが指摘した問題点は特に都市部の問題点でもあった。
地方の魅力についてのアンケート(図表2-11「地方の魅力」)では、自然が多い、ゆとりがある、家が広い、混雑しない、健康によい、静かである…などの順で地方の評価点が高くなっている(図表2-11地方の魅力)。

 

041-1.gif

 

問題は地方が今後こうした自然的メリットを活かしつつ、更に都会的なメリットをどこまで取り込んでいけるのか、経済的格差、文化的格差等をどこまで克服し、中央志向に対抗して行けるかにかかっている。
国はこれまでに、地域発展のための様々な法律を策定し、問題の克服に努めて来た。しかし、雇用機会の不足や賃金の格差などの従来からの問題に加え、円高や高齢化、少子化などの困難な問題が地域の問題をより複雑にして来ている。
(2) 地方の賃金格差とUターン
労働省賃金構造基本統計調査報告(が平成7年)によると、東京圏の大卒男子の初任給は198,600円であるのに対し、東北では182,300円、南九州では176,900円となっており、東京

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION